待子さん/salco
 
ともと一日
の疲れを浮かべた妻しか見たことがない。息子は尚さら関心がない。
 次第に塞ぎ込むようになり、カーテンも引かずテレビもつけず、真っ暗
な居間のソファでうつけている。帰宅した純一が点灯し、声をかけると初
めて訝しげな顔を振り向けて、「あら、お帰り」とうっすら笑む。
「メシは?」
「ああ、今」
 そんな風に、サラダにゆで玉子を切らずに載せる。刺身に味噌汁が付か
ない。夏期講習の費用を失念する。或る晩は秋刀魚を焦がし、米に芯が残
っていた。
「何だよ、こんなの食えないよ」
「ああ、ごめん」
「ふざけんなボケ」
 テーブルに箸を叩きつけてふて寝してみたものの、腹が鳴るの
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