待子さん/salco
けではない。遥か前方を行くサラリ
ーマンがガードレールを跨いで斜め横断をする。あ、出たなと私も倣う。
いい年をしたおじさんでさえ怖いのだと思えば、御同慶の至りと苦笑の余
裕はない。
いつしか右側の歩道を帰る人がめっきり減ったように思う。夜道には部
活や塾帰りの子供達だっている。やっと苦情が出始めたのか、最近になっ
てパトカーが青い回転灯を閃かせながら巡回するようになった。
母親が変調を来したのは、思えば純一が高校に入った頃かも知れない。
どことなく元気がなく、夕食後に片付けの手を止めてぼんやり座っている
のを見かけた気もする。出版社に勤める父親は帰宅が遅く、もとも
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