待子さん/salco
 
のよ? 足だってちゃんとあるし。煌々としたス
ーパーの中をうろついてる時だってあるんだから」
「いやさ、このビルにも出るんだって。けっこう有名なのよここ。一階の
眼鏡店さんなんかそれで出て行っちゃったんだから。朝、店員の男の子が
一人で店開けるだろ? 誰もいない奥の方からさあ、女の声がするんだっ
てよ!」
「やらー。へんへーハ、ひはほほはんほ?」
「俺はないけどさあ。でも何か不気味だよ、治療が長引いて遅くなった時
なんか」
 お蔭でその夏は歯医者通いのホラーが重なった。
 職場の同僚もいやあねえ、と顔を曇らせてくれはするものの、この町で
帰宅に無用な緊張を強いられているわけで
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