待子さん/salco
 
をきく。しょうがない子ねえ、早くかばん置
いて手を洗っておいで。
 ご飯は芳しい湯気を立てて輝いている。茶碗の中で冷え、こわばり、黄
変し、腐り、緑変し、溶け、黒く干乾びて底にこびりついている。 



 この辺りでその女を見かけるようになって もう三、四年になろうか。
もっと前からいたかも知れないが、行き会わなかったか目に留まらなかっ
たのだろう。この団地に引越して六年目に入るけど、帰宅が遅い夫は見た
ことがないと言う。
 出没するのは夜更けもあれば夕まぐれの時もある。身綺麗な普段着で、
白髪混じりの頭を大抵はひっつめにしている。雛人形めいた微笑を浮かべ、
小声で唄うよ
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