白の海域/葉月二兎
 
である<彼>だけが、この不可侵の海域に
 その舳先(Stem)を向けている。
                ここにおいて、
 隠すことの行為そのもの、として示されていた「存在するはずのない飾り羽」―
――筆(pen)は、羽根(penna)の羽軸(Stem)として、“存在するとは別の仕方”で
    <それ>を顕にする。

 この余白、あらゆる未-決定―――“他者”の、「法」の、<死>の、あるいはイメージの
<書き記/印すこと>の、したがって<無−人称> であるこの海域において、<書く>こと、
それは“波を分けてゆくこと(distribuer une vague)”であり、
 
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