さくらぞめ/亜樹
 
は『アイ』と呼ばれるような、確かな感情に変わることは無い。
 確かな感情に変わるには、あまりに時間が足りない。
 僕は十四で。
 沙名も十四で。
 けれど僕は来月戦場へ行き。
 彼女は明後日お嫁に行く。
 遠い遠い南の国へ。
 遠い遠い隣の町へ。
 寒々しい青い空に不似合いな灰色の戦闘機が大きな音を立てながら飛んでいた。
 木枯らしと言うには緩く風が吹いている。
 師走も間近だというのに、今年は少しも寒くならない。
 世界が壊れているのだと、父さんは言った。


 僕らの世界は戦争をしている。
 もうずっと長いこと。
 けれど御国は其れを認めようとはしない。
 『
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