ざくろ/亜樹
 
、風車
――お屋敷に乗り込んで
――おかぁちゃん
――間の悪い
 口々に好き勝手に言い合う声は、漣のようにたきの鼓膜に届いた。
 心地よくすらあった。自然たきの顔に、笑みが浮かぶ。
 何があったのか、たきは知らない。
 あの夜、たきが庭から戻ったときには既に、戸分太も良人も、そしてたきが体を担保に金を借りていた男も、一緒くたに死んでいた。畳にも布団にも染みこまなかった血が、まだのっぺりとした光沢を伴って赤かった。
 何がいけなかったのか、たきは知らない。
 人は不義だ売毒婦だとたきを責めるが、それなら餓死すればよいとでも言うのだろうか。たきの良人が、勝手にそれに気づいて恥ずかしさ
[次のページ]
戻る   Point(0)