ざくろ/亜樹
 
く蠱惑的なものとしてたきの眼には映った。
 ふらりと、誘われるまま、一番低い位置にあったその実をもぎる。
 よく熟れたその実は、よく熟れて、ぱっくりと割れていた。
 半透明の赤い実が、ぎっしりとそこから覗いていた。
 月の光が透けて、まるで紅玉のようで。
 たきはその細い指を、そっとその割れ目に差し入れた。





***





 刑場には、生ぬるい風が吹いていた。
 竹で編んだ粗末な柵越しに、黒い人だかりが見える。
――怖いねぇ
――おとろしいねぇ
――血の海だったんだってさ
――おかあちゃん、お腹すいた
――子どもがいたらしいじゃないか

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