ざくろ/亜樹
まりはそういうことなのだ。
そうして夜になった。
最期の晩だというのに、良人も戸分太いつものように夕餉を取り、早々に寝付いてしまった。ただ、良人が飯が上手いと言ったのは、はじめてだったかも知れないとたきは今更ながらぼんやりと気づいた。
灯りもともさない部屋で、小さく二人分の寝息だけが響いていた。それがたきには妙に気に掛かった。明日にはこのどちらの消えるのかと思うと、妙に胸がむかつくのだ。
そう、けして悲しいとか、胸に詰まるとか、そういった切ない感情ではなかった。
むかむかするのだ。胸の奥が。とにかくも、落ち着かない。
生きた人の匂いが、とにかく不快だった。
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