ジュブナイル/山中 烏流
 




必要性に応じて生きている

大人たちの叫ぶ声で
雲の影は去った

君が泣かないために
氷砂糖と毛布を買って
家に帰るけれど
本当は、君の好きなものを知らないし
そもそも
君なんて居ない





海になりたい、と言う
彼女は
私の腕を引き連れて
ゆっくりと沈んでいった
朝に
ざわめく、生い茂る私にもがきながら
小さな口で
その、身体を、細かく、千切っては
砂の街
幼い頃の彼女に似た女の子は
笑う
蜃気楼のような波が立つと
ほとんどのものが
遠くの方で手を振り出すから
波間には
彼女の声だけが残り
例えば髪や、爪、耳も
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