妖怪と街灯/竜門勇気
 
ないかい?
君もくづめ小柿に会ったのかも知れないね。

ひっつめ山査子はね、言ってみればただの猫だよ。
君の家の周りには猫がいるかな?首輪をつけた、近くを通ったときに涼し気なチリチリ音を立てる鈴をつけた。ひょっとしたら姿を見たことがないかも知れない。
窓の外を横切る影とチリチリ鳴る鈴だけで、「あのこかな」と思うのかも知れない。それは年に一度、時に数日だけのこと。すぐ君は忘れてしまう。
だけど子供の頃の思い出の中にある音が何十年たってもまだ年に一度聞こえる。まあ最近は猫も長生きだからね。無いことじゃない。
けどそれから十年。また十年。まだ年に一度は出会う。窓辺で夢うつつの時、それどころ
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