午後の果実/たま
 
ままに生きたと嘆くことはない

Hのくちびると幼い笑顔が好きだった
ただそれだけの理由でカヌーのような舟にのって海を
渉った
たどり着く岸辺はなかったのに

 もう、帰るの?
 うん。
 ごちそうさまって言ったの?
 
たしかに
言わなかったかもしれない
旬のない午後の果実に雨は降らなかったし
花も咲かなかった

 きれいなことばだね
 なにが?
 ごちそうさまって
 そんなこと言ってまたごまかすのだから

ごまかしきれない女もいるけど
Hはいつもその先をことばにしない
ことばにしたら骨が燃えつきるまで一緒にいられない
あしたはわたしが負ける
それ
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