眠り姫/salco
 
たちまち私の
顔面は強烈な腐臭に呑み込まれ、
「グエッ!」
 と次は私である。喉を焼く胃液漬けのクラッカーを吐き出した。目も
開けていられない。たまらず全てを放り出し、必死で土を搔き登った。
四つん這いで何とか木の根方を探り出し、深呼吸を繰り返す。ガスにや
られた胃がよじれて痛んだ。何度か胆汁を吐いた。水を飲み干したのが
返す返すも悔やまれる。

 どれくらい経ったのだろう。ようやくひと心地がつき、穴の縁に近づ
いてみた。息を止め、眼鏡を下に落として来なくて全く幸運だったと考
える。二度と下りる気はない。背後の空気を今一度深く吸い込んでから
息を止め、こわごわ
[次のページ]
戻る   Point(2)