ウォーホルの雪だるま/「Y」
 
のかな」
「もちろん、あったよ」
「じゃあ、なんでこの実物は、ちゃんとしていないのかな」
「この前説明したでしょう?警備員が、空調設備のスイッチを切ったのよ」
「なんで?」
「その警備員が、アンディの熱狂的なファンだったから」
「なるほど」
 
 その晩、5番街にある安ホテルのベッドの上で、僕は真里に言った。
「やっぱり、あの雪だるま、面白かったよ」
 真里は僕に訊ねた。「どんなところが?」
「半分溶けてしまって、雪だるまじゃなくなってしまうところがさ」
 そのあと僕と真里は、雪だるまの展示室の空調をOFFにした、若い警備員のことについて話し合った。器物損壊の罪は重いが、な
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