ウォーホルの雪だるま/「Y」
 
だるま」はあった。僕たちは、名だたる芸術家の大作をスルーして、「雪だるま」へと向かった。
 低温に保たれた透明な水槽を思わせる小部屋の中に、雪だるまは置かれていた。手前には、証明書らしきものが展示されている。
「……これが、アンディ・ウォーホルの雪だるま?」

「ウォーホルの雪だるま」は、どう見ても、雪だるまには見えないのだった。単なる雪の塊だとしか言いようのない代物なのだ。もちろん、目も鼻も口も無い。
「だけど、作品集には、ちゃんとした写真が載っているのよ」
 うつろな目で、透明な小部屋の内側にある雪の塊を眺めていた真里が、ぼそりと呟いた。
「……じゃあ、目とか口とかも、あったのか
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