ウォーホルの雪だるま/「Y」
 
ティストが、いかに偉大な存在であるのかを、彼女が僕に向って懸命になって説明する様子は、とても面白くて印象的ではあったのだけれど。
 その年のニューヨークの春は、記録的な寒波に見舞われていた。
 ウォーホルの雪だるまより、むしろその烈しい寒さの方が、僕の記憶の奥に刻みつけられているほどだ。
 真里は雪だるまを見る前から、とても興奮していた。
「だって、ウォーホルの雪だるまだよ。汗をかいて、せっせとこしらえたんだよ。あの人が自分で。ねえ。信じられないくらい、凄いことじゃない?」
 瞳を輝かせながら、真里は僕に向かって言った。
 ギャラリーの中央を貫く廊下の突き当たりに、「ウォーホルの雪だる
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