背中/はるな
たしのなにかが必要だったのではない。(そうであったらいいなと思う気持ちでもある)。わたしは彼しか欲しくなかった。彼もそうであったらいい。そこにあるもの同士で一緒にいたかった。何も持ち寄らず、何も持ち去らず、そこに横たわるものだけを分け合うような。それなのにどうして、離れていても欲しがるのだろう。それはもう立派なルール違反だ。わたしたちは、ただそこにあるもの同士で抱き合えていたのに。
あの背中に触れられるだろうか。それともきちんと遠ざけることができるだろうか。愛しさを抱いたまま熱だけを手放すことができるだろうか。
浅ましいことに、わたしはその愛しさに未練を抱いている。熱ではなく愛しさに。それ
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