歌謡曲日和 -あの娘は綾波レイが好き-/只野亜峰
では『渋谷で姦される事』も『ハウスのDJと便所でセックスする事』も『アイスクリーム』も『睡眠薬』も等しく彼女を支えるかけがえのない存在であるわけですね。『綾波レイ』という固有名詞は、そういった彼女の依存の対象を放り込む入れ物に過ぎないわけです。そして、あの娘が睡眠薬に溺れているのもヤリマンなのも綾波レイが好きなのも中谷美紀が好きなのも、『僕』にとっては等しくどうにもならない事なわけです。
そんな彼女のために『僕』がしてやれる事なんていえばせいぜい『猿になって彼女の自傷行為を手伝ってやる』ぐらいしかないわけですね。峯田の描く『僕』は強烈にその事を自覚していて、自分の手では彼女を明るい場所まで連れ
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