五十日目の日記/縞田みやぎ
出入り口の非常灯がブランコのように揺れている。「それ,危ない。」と指差すと,気づいた近くの同僚が,真下にしゃがみ込んでいた同僚の手を引く。
果てないと思った揺れがおさまる。
「何だったの。」と呆然としながら,人々が次々と立ち上がる。と,すぐに突き上げるような余震。しかも何度も続く。悲鳴があがり,人々は立ったりしゃがんだりを繰り返す。「これはだめだ。」と誰とも無く言う。電気はいつ消えたのか分からなかった。隣の事務室を覗くと,室長のデスクを巨大な書棚が押し潰していた。室長はテレビを見ようと席を立ったために間一髪難をのがれたらしい。ともあれ怪我人はいないようだ。
10分ほど経ったか。廊下から
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