五十日目の日記/縞田みやぎ
から「全員退避!」と叫ぶ声が聞こえた。出張から帰還中に地震に遭い,やっと到着した施設長だった。自分や入り口近くに居た同僚が口々に「退避です。出てください。」と復唱する。ほとんどが部屋を出た段階で,自分もすぐそこのデスクから外套とバッグだけをつかんで外へ。
駐車場の空きスペースに,人々が呆然と立っている。ちょうど車が目の前にあった僕は,いざとなったら人を乗せられるよう,後部座席にあった荷物をラゲッジに詰め直し,手荷物を置く。大きな荷物を抱えていた同僚に「とりあえずここに置きな。」と声を掛け,カーディガン一枚でいた同僚に外套を貸す。
雨がぱらつき始めた。防災無線がサイレンを鳴らす。大きな地震が
[次のページ]
戻る 編 削 Point(29)