五十日目の日記/縞田みやぎ
」という地鳴りがし,大きい地震が来るのは直前にわかった。壁に咄嗟に手をつく。やがて本震が始まる。
第一印象は「でかい」。それがすぐに「長い」になり,同僚たちが悲鳴をあげる。ガス台,ストーブの近くの同僚が飛びついて火を消す。「ちょっと,ちょっと,やだ。」「長いよ,長いよ。」「まだだ。まだだ。」「なんでまだ終わんないの。」立っていられずに次々としゃがみこむ。僕はちょうど給湯室の入り口に立ち,柱に手を突っ張りながら体を支える。みっしみっしという音は何によるものか。
窓に目をやる。鉄筋の建物はガラスが割れたら崩れることは,前々の地震の時に聞いた。まだ割れない。視界の端にぶんぶん揺れるもの。非常出入
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