春雨 / ****'99/小野 一縷
 

遅すぎた雪は
後から追ってきた 雨に溶かされて
もう 降らない
でも 雪は
きみが大切に育てた
色とりどりの花たちを 皆殺しにしていった

夕時雨に
垂れた 白い涙 啜って
重く沈む夜を いくつ
待ち侘びたことだろう
昨夜より 深い今夜であるように


今夜
きみが好きな 雨の夜
また 甘く 甘く 沈んでゆくんだね
夜の黒の重なり 
その隙間に 滑り込むように 

時間は 永く
酔ったまま
桜咲く 墓地へ
誘われて 暗い車内
雨粒は硝子の上 寄り添い合って

平面の月を手の平に
散らばして
花びらのように
一息で吸い込んだ

この時
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