春雨 / ****'99/小野 一縷
 
の時季の日中 人が多くなるから
嫌いだ
でも 桜の花は
嫌いじゃないと思っていた
騒がしさが
目について この時季が嫌なだけ

桜より
きみは 白の芥子の花が好き
ぼくは 緑の麻の花が好き

でも決めたんだ
ぼくの大切な花たちを
この手で殺してゆくことを

残念だなんて言わないで

いつか
ぼくときみの出会いに 思い耽ることだろう
二度と嗅ぐことのない 花たちの 芳しい匂いを
偶然 鼻腔の奥に見つけた時

その時は 真っ先に電話するよ
その時 ぼくらは微笑んでいるから

だから 心配しないで

今夜に
沈んでゆこう




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