雪の照り返すこと???黒崎立体 “平川綾真智「胎児」について”/葉月二兎
 
母のカレーが好きだと
  鼻をくすぐるコンソメにこぼす。
  飴色のタマネギが ルーの香りに隠れた頃
  電線の向こうの変わり行く空に
  私は携帯の留守電を、
  蹴る腹に向けて
  保存した


最終連。とても寂しい姿、雪の降らすこの「空」を見ていた姿。
でもこの姿とは?……“かけ直せない”電話を、家族というほつれた糸を、あるいは電話を抱えるようにして
その「胎児」をかかえ空を見ている、この雪に写し替えされた姿だろうか。

この問いに答えるべくもなく、ただ一つこの雪に写しだされているものがある。
すなわち、生きていく未来と生きられた過去という「雪の表裏」。
これか
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