【批評祭参加作品】文法に果敢に肉薄する文学/石川敬大
この、ごつごつ感の、文法的に奇異な表現の行きつく先は、文法問題になることは不可避だったのだと思う。その問題は、いまも読者を魅了する室生犀星の「悪文」という個性に帰結している。「不自然」「特殊な表現」「文意が明瞭でない」けれども、全集の校訂者たちは「そのままにした」。その量たるや壮観であったそうだが荒川は、「つないでいけば、『詩』になるのかもしれない」とまで評価する。
荒川における詩の定義とは、小説の枠を逸脱したもののことを指すのだろうか。文法上奇異な表現のことをいうのだろうか。詩であれ、小説であれ、文学というものは、極論すれば、既成概念や制度に挑みかかり、文法に果敢に肉薄するものでなければ
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