【批評祭参加作品】文法に果敢に肉薄する文学/石川敬大
ら、ごつごつした、おおきな才能が出ないのはそ
のためである。(中略)変な後日談をくっつける国木田独歩や、
とりとめのない梶井基次郎の短編などはいまなら没にされるは
ず。太宰治の「ヴィヨンの妻」の、おやじさんの長いおしゃべ
りも無用のものとされ削られるだろう。名作は失われることに
なる。(後略)
小説など、散文の文章とは違って詩は、ごつごつした、常識的にも論理的にも矛盾した表現がかなりのところ許されている。アドバイザーや編集者の過度の助言によって手直しされたつるつるの詩では、小説いじょうに読者の心に訴えることはできまい。荒川は、高見順のこんな詩を引用して、そのごつごつ
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(5)