【批評祭参加作品】空が青いから白をえらんだのです 奈良少年刑務所詩集/石川敬大
 
んなのに


 そうなんです。母親の育児の手なくしては赤ん坊や子どもは生きてゆけなかったのです。つないでいた手を離して、ひとは独り立ちしてゆくのですが、家に帰っても「ただいま」とすら言わなくなる時期があります。話をしなくなる時期があります。そしてついに、非行に走ることも。でも母親は、どんなときにでも「笑顔を向けて」待っていてくれるのです。少年はいま、そのことに気づいたのです。気づいたのならきっと、二度と非行に走ったりしないでしょう。母親を泣かせるようなことはすまいと思うでしょう。

 この詩を書いたOくんのことを、編者である寮美千子は次のような後日談で、受刑者の更生のきっかけとなる心理と
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