【批評祭参加作品】空が青いから白をえらんだのです 奈良少年刑務所詩集/石川敬大
 
ことに詳しいのです。当初、消え入りそうに小さな声でしか人前で話せなかった少年が、この魚の詩をきっかけに魚のことに詳しいとみんなに認知され、そのことで人前でも堂々と話せるようになったそうです。たしかに「海の表面」を「パチパチ」と「音を立てて逃げて」ゆく魚の様子を、実に活き活きと描いていることがわかります。魚が好きで釣りが上手な、少年ならではの詩だということがわかります。


  ゆめ

 ぼくのゆめは……


 これだけの詩です。すごい一行詩だと思います。なぜなら、少年の「ゆめ」が、言葉にされずに、言葉にならずに、これだけの表現の背後にすっかり隠れてしまっているからです。したがって読
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