【批評祭参加作品】となりに、近くにいる人は簡単には理解しえない。 佐藤泰志『海炭市叙景』のこと/mizu K
よろしくそれを週末の夜に読むことを楽しみとする。それが「教養」につながると信じている。典型的な公務員であり、豪奢ではないが生活もじゅうぶん安定していて不自由なく、自分は「文化」というもののよき理解者である、という「思いこみ」。これだけでもこの人物を滑稽に、嘲笑的に描くことが容易であることは想像に難くない。しかし作者はそうは描かない。話の中心人物であるがゆえに読者はある程度の多少はあってもこの人物に感情移入するし、比較的好意的な視点から読み進めることになるのだが、実際、文章のニュアンスに彼をあざ笑う傾向は認められない。作中の彼は、「文化」というものに対する認識をどこかで履き違え、あまりに表層的な「モ
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