【批評祭参加作品】主観という自家薬籠中の物/石川敬大
るのに、馬鹿み
たい、部屋のなかを風がいつも吹いているなんて、馬鹿みたいだ、
最近はこの風のせいで部屋がとても乾燥していて、乾燥が憂鬱を
服用して粉になって迫ってくるので、少女のふたつの目は乾いて
しまってしかたがない、ただでさえ小さな目に小さな硝子を入れ
ているのに、そこにも風は吹きつけてゆくのだから、大切な少女
の家計簿の詳細がうまく見えないときもある、困る、書きつけら
れた文字は水中のように震えるので、あらゆる発見が用心をかさ
ねて去ってしまうまえに、少女は新しい目硝子を購入するために、
バスを選んでバスに乗って、渋谷へでかける。
(略)
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