【批評祭参加作品】主観という自家薬籠中の物/石川敬大
 
す。それは堂々としたあらゆる球体の母親であるかのよ
 うに深く深く、波うっています。その象の目には本という何十億
 の面が反射しあって何億という人々の色々が映っています。思い
 出や意見や成就や残念が映っています。影がしゅっと消えたかと
 思えば音楽が鳴り、しくしくと泣き、抱きしめあい、死に別れ、
 企みがあり、論理があり、悔しい気持ちに死んでしまったあの晩、
 告白が解除され、陥れられ、復讐や、手紙を書いたりしているの
 です。数字の曼荼羅が一面に広げられ、虐げられた感受性その他
 が眠るのです。約束を交わし、各種の素晴らしさや尊敬、見えな
 い力は語ることによって語られ、また
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