【批評祭参加作品】主観という自家薬籠中の物/石川敬大
うし、『夜の目硝子』だと「乾燥が憂鬱を服用して粉になって迫ってくる」とか「書きつけられた文字は水中のように震える」といった語句に、言語を物質化する能力や、外存するものを異化できる目を、川上が所持していることを示唆することができるかもしれない。
『夜の目硝子』の「目硝子」とは、つまり体制側、既成の側の商品名でいうならコンタクトレンズのことであり、〈主観という内在性のフィルターを通した感覚的な文体〉とわたしが先に指摘しておいたように、川上はじぶんの感覚に適合する言葉をじぶんが保有し駆使する言語群のなかから探してきてあてがい、言語表出時の内的システムを構築することによって、自家薬籠中の物として表出言
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