【批評祭参加作品】詩と小説の境目「とげ抜き」について/石川敬大
り坂。
文体に独特のリズム感があって心地よい意味の飛躍がある。「一段。一段。また一段。」とか「不穏な空気。そしてそこから岩の坂。くだり坂。」といった句点の多用によるテンポ感が文体に浮力を生じさせている。そしてそこには、庶民的な義理人情に訴える浪花節の口調や、浄瑠璃、説経節、祭文語りなどといった浪花節の基礎になっている口承文学などを想起させるものがある。現代の巣鴨駅などが出てきたり、『渡海して、桃を投げつつよもつひら坂を越える事』ではカリフォルニアが主要舞台で夫との暮らしぶりに焦点が当てられているにもかかわらず欄外に、古事記や宮沢賢治の『セロひきのゴーシュ』とともに説経『信太妻』より「声をお
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