【批評祭参加作品】詩と小説の境目「とげ抜き」について/石川敬大
 
う。

  ああ、巣鴨駅の階段は長すぎます、二十四、二十四、十三に、
 改札を出て、四十五、四十五、四十六とぜんぶあわせれば百九十
 七段あるんです。とても遠い、遠い。はるかに遠くなりました、
 息が切れてつろうございます。地下鉄ができてからというものお
 地蔵様にいくのが前よりもっと不便になって前よりもっとご利益
 があるような気がいたします。
  階段を。一段。一段。また一段。息切らしながらのぼりつめて。
 ぽっかりと外に通じる口から出るのです。都営六号線板橋本町駅
 の出口であります。やっと外に出たと思ったら環七の高架の下。
 不穏な空気。そしてそこから岩の坂。くだり坂
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(6)