【批評祭参加作品】詩と小説の境目「とげ抜き」について/石川敬大
 
する拘りをベースに展開するストーリーそのものにも、詩性の露頭こそ垣間見えても、詩の正体が潜んでいるとは思えない。いっそのことメタ言語があるのだからメタ詩としてのストーリー展開、ストーリーの構造、意味の飛躍、文体のリズム感、小説ではあまり使われることのないリフレーン、そしてなによりもこの伊藤の語り口調を考察したなら、もしかして、詩性が潜む草叢がみつかるかもしれない。消去法で考えてみることにしよう。すると、意味の飛躍と文体のリズム感(音律)に集約された語りの口調が残るだろう。すこし具体的に文章を引用してみよう。例えば『母に連れられて、岩の坂から巣鴨に向かう事』の33頁の最後の方の箇所だ。ここがにおう。
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