【批評祭参加作品】詩と小説の境目「とげ抜き」について/石川敬大
さすわ さされるわ そらええわ』(青土社)がそうだが、彼女をもって嚆矢とはしない。平成19年度、第15回萩原朔太郎賞を受賞した伊藤比呂美の『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』が、わたしが知る範囲では最初の該当作だと思う。伊藤が、詩のつもりで書いたのか、小説として書いたのか、それとも、とにかく書きたいから書いた、そんなジャンル分けは書いた本人に興味はない、編集者の仕事だろう的な発言を、詩人の鼎談かなにかで読んだ記憶もある。事実伊藤は、先に記したように、詩の賞を受賞したのであるから、詩集と呼ばれてもなんら依存はなかったのだろう。またこの時点で『とげ抜き』(以下そう略す)は、詩集として一般に認知されたことになる
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