【批評祭参加作品】近代詩へのリンク ー富永太郎試論ー/石川敬大
化に正当性が顕わになると思われる。『秋の悲歎』の詩稿に関しては、つぎのようなエピソードがある。「こんなものが出来たから近況報告がはりに送つてみる。はゝあランボオばりだな、と言つてもいゝ。とにかく日本流行の『情調派』でないといふレッテルをつけてくれたら本望だ」(大正十三年十月二十三日付)と小林に手紙を書き、この詩を同封している。また村井康男にも同じ詩稿を送りつけ「先日の散文詩届いたかしら。即刻返事をよこすこと」(同年十一月十五日付)と返事を待ちわびる手紙を出している。これに先立つ十月十一日に、最初の喀血をしていることなど時系列的に事実を踏まえれば「即刻返事」と書きつけたところに、焦燥と作品への自信と
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