【批評祭参加作品】近代詩へのリンク ー富永太郎試論ー/石川敬大
 
』四・五号に『人工天国』を訳載し、思潮社版詩集に掲載されている詩もランボーの『饑餓の饗宴』を除きボードレールで占められている。生前発表作品は『山繭』一号の『橋の上の自画像』『秋の悲歎』から六号の『断片』(創作時期を『鳥獣剥製所』後と大岡は示唆している)までの八篇だが、わたしは詩法的に見て『橋の上の自画像』はボードレール調、『秋の悲歎』はランボーのそれであると言いたい。韻文と散文の違い以上にこの二篇には技法的に断絶が感じられるからだ。さらに言えば、発表順に並べられた詩の『無題 京都/富倉次郎に』と『断片』の間にもそれは感じられ、いっそ大岡の指摘通り『断片』を『鳥獣剥製所』の後に置いた方が、その変化に
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