【批評祭参加作品】近代詩へのリンク ー富永太郎試論ー/石川敬大
 
れない。また、近代詩のもう一方の雄である宮沢賢治の『春と修羅』を「近頃発見した面白い詩をお目にかける」、「大へん立派な詩集だ」と正岡宛の手紙に書いて詩篇『蠕虫舞手』を書き写して同封している。

  (えゝ 水ゾルですよ
   おぼろな寒天の液ですよ)
 日は黄金の薔薇
 赤いちひさな蠕虫が
 水とひかりをからだにまとひ
 一人でをどりをやつてゐる
  (えゝ 8γℓ6α
   ことにもアラベスクの飾り文字)  (冒頭部)

 もし富永を最後のサンボリストであるとするなら、『春と修羅』集中のより象徴的である詩に目がいって、賢治の詩の良質な『永訣の朝』『松の針』『無声
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