【批評祭参加作品】近代詩へのリンク ー富永太郎試論ー/石川敬大
 
各詩行の音節の区切りを確認するためのアンダーラインが引かれている(企画展リーフ)というから、フランス語のリズムを大事にして訳していたのだろうことが伺える。夭折して未発表詩まで入れても三十七篇しか残せなかった富永の最後の詩が『ランボオへ』というのも暗示的であるがそのことは置く。わたしは少し翻訳のことばかり語りすぎたかもしれない。だがもう少しだけ語りたいのを許して欲しい。それは富永が亡くなる大正十四年春に、ヨーロッパから十数年ぶりに帰国した堀口大学のことであり、訳詩集『月下の一群』のことだ。これを待つようにして、日本の近代詩は言文一致体の口語自由詩のエクリチュールを完成した。フランスの詩人六十六人の作
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