【批評祭参加作品】近代詩へのリンク ー富永太郎試論ー/石川敬大
 
て、中也が母フクへ送った「詩人の死顔です」の付記がある富永の臨終写真と、「これは偉い人だったんだよ」と何度も中也が弟たちに語ったという記事が載っていて、「ダダさん」(当時ダダイズムかぶれの中也を、富永はそう呼んでいた)であった中也に、表現スタイルを更新させるきっかけとなったフランス近代詩を教え、やがてランボー詩集に結実することとなるその端緒の位置にいたのが富永であった。
 富永の作品と人となりについては、思潮社版現代詩文庫『富永太郎詩集』が詳しいが、ここではわたしなりの切り口を提示したい。よく知られているように富永は、ボードレールを原書で読みたい一心から東京外国語学校仏語部に入学した。『山繭』四
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