【批評祭参加作品】近代詩へのリンク ー富永太郎試論ー/石川敬大
悪、戦慄と恐怖や、
又強ひられし苦役はわが身の中に歸り来る。
北極の地獄の日にもたとへなん、
わが心は凍りて赤き鐵の破片よ。
(「秋の歌 一」の二連まで)
蒼き夏の夜や
麥の香に醉ひ野草をふみて
小みちを行かば
心はゆめみ、我足さはやかに
わがあらはなる額、
吹く風に浴みすべし。
われ語らず、われ思はず、
われただ限りなき愛
魂の底に湧出るを覺ゆべし。
宿なき人の如く
いと遠くわれは歩まん。
戀人と行く如く心うれしく
「自然」と共にわれは歩まん。
(『そぞろあるき』全篇)
一方
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