【批評祭参加作品】近代詩へのリンク ー富永太郎試論ー/石川敬大
く、要は只類似の心状を喚起するに在りとす」と。これに呼応して現れた岩野泡鳴が訳したアーサー・シモンズ「表象(象徴)派の文学運動」(大正二年十月新潮社刊)は、「富永のほか、中也、小林秀雄に決定的な影響を与えた」(企画展リーフ)とされている(西脇も十九歳の時に影響を受けている)。この本と相前後して刊行されたのが先に記した永井荷風訳著の『珊瑚集』だった。ボードレールの『秋の歌』とランボオの『そぞろあるき』を引いてみよう。
吾等忽ちに寒さの闇に陥らん、
夢の間なりき、強き光の夏よ、さらば。
われ既に聞いて驚く、中庭の敷石に、
落つる木片のかなしき響。
冬の凡ては――憤怒と憎悪、
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