【批評祭参加作品】近代詩へのリンク ー富永太郎試論ー/石川敬大
 
』(本郷書院)が明治三十八年十月、ここにあのヴェルレーヌの名高い詩「秋の日の/ヸオロンの/ためいきの/身にしみて/したぶるに/うら悲し/(略)」やカール・ブッセの「山のあなたの空遠く/「幸」住むと人のいふ」が掲載された。その序文で敏は、マラルメの詩論の一部を紹介して象徴詩のことを語っている。「詩に象徴を用ひること、(中略)之が助を藉りて詩人の観想に類似したる一の心状を読者に与ふるに在りて、必らずしも同一の概念を伝へむと勉むるにあらず。されば静に象徴詩を味ふ者は、自己の感興に応じて、詩人も未だ説き及ぼさざる言語道断の妙趣を翫賞し得可し。故に一篇の詩に対する解釈は人各或は見を異にすべく、
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