【批評祭参加作品】近代詩へのリンク ー富永太郎試論ー/石川敬大
世的神秘主義である」(『研究 富永太郎伝』)と記しているが、真偽はともかくいまは留保するしか手立てがない。さて、もう一冊古い文庫本がある。永井荷風訳著の『珊瑚集』で、昭和二十八年一月十五日発行の新潮文庫版だ。内容は、「大正二年籾山書店発行の初版本を原典と」すると記して、ボードレール七篇、ランボー一篇、ヴェルレーヌ七篇、ゴーチェ一篇、ピカール一篇、レニエー十篇ほか十三名の詩人、三十八篇の詩が掲載されている。これに遡る明治二十二年には森鴎外らの手で新体詩として声望が高い『於母影』(新声社)が刊行されている。収められている詩はバイロン、ゲーテ、ハイネ、ゲロックら十七篇、つづいて上田敏の訳詩集『海潮音』(
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