【批評祭参加作品】近代詩へのリンク ー富永太郎試論ー/石川敬大
 
としても、代替のきかない気高さを保持している。
 富永が、ボードレールに入れあげるきっかけが何であったかその確かな資料はどこにもない。十一歳で小柳津信子に英語を学び、十八歳で第二高等学校(東北大学)理科乙類(ドイツ語)入学からニーチェ、ブレーク、ショーペンハウワーなどドイツ語の哲学書に親しみ、フランス近代詩に接近することになるのだが、驚くのはベルギーの詩人メーテルリンク、イタリアの未来派詩人マリネッティ、ルネ・ギルの『言語考』にまで食指を伸ばしている点だ。大岡は富永の最初の詩『深夜の道士』(大正十年)について、「外面的には日夏耿之介のかなり顕著な影響が窺はれるが、内容はショーペンハウエルの厭世的
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