【批評祭参加作品】近代詩へのリンク ー富永太郎試論ー/石川敬大
岡忠三郎(子規のいとこ)や村岡康男の奔走で、没後に詩集が出版され「富永の作品を高く評価せず、やっと『焦燥』を採る程度」(北村太郎『縁辺の人』)であった小林が、文芸評論家となって中也のポピュラリィティの礎を作り、大岡が評伝にまで手を広げることがなかったなら、これほど丁寧で精緻な『研究 富永太郎伝』が書かれることもなかったはずだ。そのことは大岡の自我の問題ともフュージョンして切実であり、中也はいざ知らず富永に関する限りその仕事は実証面において抽んでており、これを凌駕する論考にはいまだにお目にかかっていない。手もとに中原中也記念館・秋の企画展(平成十三年度)「秋の悲歎・富永太郎」のリーフレットがあって、
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