永久ギターと星の猫/kawa
いった辺りへ差し掛かって、微かに、ギターの音が聞こえてきた。こんなところで弾き語りとは珍しい。そういうものは、街の中でやるものだろう?
山を下りきったところで、果たして奇特な演奏者の正体を知った。猫だった。
深い紺色のスーツを着込んだ猫が、野道の端っこで、小作りな木椅子に腰を掛け、涼しい顔でむにゅむにゅ弾いている。
不思議に落ち着く曲だ。人魚のそぞろ唄、あるいは胎内で聞く母のピアノとは、こんな風だろうか。器用に爪を引込めて、しかし、大した腕だった。星空に似合う曲だった。
僕は猫の前にしゃがみ、どのみち、一生に一度のことだと、少し聴いていくことにした。ややも経たず、音の間に景色が見え
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