「荒地」を読むための諸前提 2/るか
 
想像的な社会が思い浮かべられていたのではないでしょうか。
それは、ひとつの<詩の場所>、詩的ユートピアとも言い換えられるかもしれま
せん。じつは鮎川個人の思想にはユートピア主義の陰は薄く、マルクス主義に対
しては常に批判的でしたが、多くの詩人がそうであるように、鮎川の胸中にもユ
ートピアへの意志が存在していたことは、作品「アメリカ」を読むと理解できま
す。
 
  「アメリカ…」
  もっと荘重に もっと全人類のために
  すべての人々の面前で語りたかった
  反コロンブスはアメリカを発見せず
  非ジェファーソンは独立宣言に署名しない
  われわれのアメリカはまだ発見され
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