ねこちゃんパップ/salco
滞りは否めぬ
老いの体の血の巡りとて、肩に置かれた思慮深い腹の暖は頼もしい。更に
劣化ゴムにも似た老人の乾皮には、しかし新陳代謝に於いて対極にある赤
ん坊にも匹敵する脆弱さがある為に、カイロや湯たんぽの直情は必ずしも
適さない。しかるに嗚呼、猫で低温火傷のためし誰にあらん。また恋しさ
に合わせれば途端にじっとり汗ばむ人肌の鬱陶しさともかけ離れた、この
柔軟毛衣の心地をば何にか喩えん。
一体に文学者の書斎という、紙魚と埃のエベレストにあってじじいの項
という、加齢臭のチョモランマ絶頂とも言うべき難所に毎日登攀を強いら
れるねこちゃんの身を慮った夫人が洗濯でもしようものなら、
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